とりあえずメシでも食うかと言い出したのはしょうちゃんだった。
白い景色のなか、1メートルほど先を行く男の子ふたりについて歩く。ああ、みっちゃんとしょうちゃんがならんで歩いている。言葉を交わして、時折笑ったりもしている。
なんだか不思議な感じだなあ。
ふたりは本当に友達だったんだ。バカらしいけどそんな実感がいまさらじわりと生まれているよ。分裂していた世界がひとつにつながった気分だ。
それにしても、こうして見ていると、ほんとにふたりはぜんぜん違うね。真逆、正反対、そんな感じ。
しょうちゃんのガタイの良さが際立つ。みっちゃんの背の高さが際立つ。グラウンドで太陽に焼かれているしょうちゃんと、日差しとは縁のないみっちゃんの肌の色は、まるっきり違って見えるよ。
北風と太陽。そんなおとぎ話があったっけなあと思い出して、なんとなく笑ってしまった。
「奈歩はなに食いてえの?」
太陽が急に振り向くから、驚いて、次に出そうと思っていた右足がうまいこと前進してくれない。
「え、あ……フライドポテト?」
うわ、我ながらアタマの悪そうな返答だな。
「なんだよそれ、メシじゃねえし」
しょうちゃんが笑う。みっちゃんもくつくつ笑っている。
ならそのへんのファミレスにすっかぁ、と、相変わらず深い笑いじわを刻んでいるしょうちゃんが言った。
「奈歩は思う存分ポテト食ってろ」
「えっ!?」
「ポテト以外はナシな」
「嘘じゃん、ひどすぎ!」
みっちゃんはたまにしょうもないいじわるを言うけど、しょうちゃんにこんなこと言われたのははじめてで、ちょっと驚いた。
しょうちゃんもテンパってるのかもしれない。ぜんぜんはじめましてじゃないのに、どこかはじめましてな3人に、変な汗をかいているのかも。
そんななかでみっちゃんだけは変わらず飄々としていて、さすがだなと思う。むかつくぜとも思う。
177センチのてっぺんにある黒いニット帽を強奪すると、みっちゃんは慣れたように「またかよ」って笑った。あきれた顔だった。