きょう、みっちゃんを誘ったのはわたしだ。
やっぱりとても嫌がられたけど。そして「松田も嫌がるよ」と言われたけど。でも、しょうちゃんに聞いてみるとアッサリ「呼べば」と言われたので、みっちゃんもようやく首を縦に振ってくれたのだった。
強引な収集だったよなあと思う。正直少しだけ後悔もしている。
だって、3人で会うのなんてはじめてで……しかも全員共通の思い出なんかひとつもないのに、いったいなにをしゃべればいいの?
変な汗をかいてるよ。ケータイをにぎりしめている手のひらに、マフラーを巻いている首元に。
とりあえず道を渡った先にあるコンビニに入った。天国かと思うほどあたたかい。わたしも寒いのは苦手なんだ。同じくらい、暑いのも苦手だけど。
窓際にいくつも刺さっている週刊の漫画雑誌を無造作に手に取り、いかにも毎週読んでますよって顔で眺める。ぜんぜん知らない漫画ばかりだ。超能力バトルもの、熱血スポーツもの、学園ラブコメディ……どれもどこかで読んだことのあるような内容だな。
「――奈歩」
半分ほど読み終えた――眺め終えたところで、ふいに名前を呼ばれる。ハスキーな声、しょうちゃんだ。
「よう」
顔を上げた先にはみっちゃんもいた。重たそうな黒のダッフルコートに、どんぐりみたいな黒のニット帽。学校に行くときとなんにも変わらない。パンツが制服じゃなくて濃紺のデニムなことくらい。
「みっちゃんおはよ。しょうちゃんありがと」
そわそわしてしまう。なんでもない顔で挨拶してみたけど、どんな声色、どんな調子でしゃべればいいのか、どんなふうに笑えばいいのか、見当もつかないよ。
そういえばわたし、しょうちゃんの前ではいつも少しだけかわいこぶっているのだ。
そして、みっちゃんの前ではいつも、どうしようもないワガママ女なのだ。
こんな重要なことにいまさら気付いてしまった。
窓の外の雪をちらりと見て、外は寒そうだねと、当たり障りのない台詞を言うしかなかった。