◇◇


右上に赤ペンで『15』と書かれたA3サイズの紙を見て、みっちゃんがおもいきりむせた。ミルクティーが気管に入ったらしい。しかもホットだから熱くてヤバイみたい。


「嘘だろ……ひどいな、マジかよ」


ひとしきりむせたあと、まるでずっと掃除されていない汚いトイレでも見たかのように、みっちゃんは震えた声で言った。


「……ちなみに、英語は」

「96」

「現代文は」

「87」

「古典」

「93」

「世界史」

「77」

「日本史」

「85」

「理科総合」

「32」

「なんでこうも文系教科に偏りすぎてるかな、奈歩は」


人には向き不向きというものがあると思うのだ。そう開き直り、理系のほうは完全にあきらめているフシはある。それは自覚している。

あきらめたら試合終了だって、どこかで聞いたことがあるけど、もう完璧にわたしと理系科目の試合は終了していると思うのだ。


「おもいっきり赤点じゃん……。つーか、数Ⅰで15点って、逆にどうやったらとれんの?」


あきれたように言うみっちゃんに対して、ミルクティーを飲みながら首をかしげると、きょうも痛くないゲンコツをされた。


「再試はいつなんだよ?」

「えっとねえ、あさっての放課後。そんでその翌日、数Aの再試もあるんだけどね」

「Aのほうでも赤点とってんじゃねーよバカ」


Aのほうは、半分はとれたと思ったんだ、ほんとに。見事に空振りに終わってしまったわけだけれども。