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球技大会は、ミキとナミとわたし、3人ともが別々のチームに収まった。ミキがバレーのA、ナミがバスケ、わたしがバレーのB。

ミキはわたしといっしょのチームになりたがっていたけど、公平にくじ引きで決めた結果、こうなったのだった。正直かなりほっとしてしまったよ。ただ、まわりの女子たちが変に気を遣ってくれていて、それだけはどうにも居心地悪かった。

わたしですらかなり気を遣われているんだから、バレーAチームは大変だろうなあ。ミキは少し感情を抑えるということを覚えたほうがいい。けっこういままで、ナミやわたしは、いろんなフォローをしてきたんだっけね……。


ナミとちゃんと話がしたい。

たまにすごく思う。

でもきっと、なにを話したって意味がないんだろうし、もしかしたらナミを傷つけてしまうだけかもしれない。もっといろんなものがこじれるだけかもしれない。

やっぱりアレコレ考えてしまって身動きのとれないわたしは、ほんとにイクジナシのロクデナシだ。



「――あれっ? 川野さんじゃん」


紙パックのピーチティーをちゅうと飲みながら木陰で涼んでいるところに、マシュマロのような甘い声が降ってきた。


「ひとり?」

「うん、ひとり」

「そっかそっか」


水樹くんがどかりと隣に腰かける。さらさらな土の上のくだらない落書きを、わたしがスニーカーで乱暴に消すのを、ふたつの重たいたれ目はじっと見つめていた。


「みっちゃんと同じチームじゃないんだね」

「そうそう。おれは野球のルールすらわかんないからね」


なんとなくふたり同時に扇形のグラウンドへ目を向ける。扇形のうち、限りなく外のほうでグローブをかまえるみっちゃんは、きょうの球技大会でソフトボールに抜てきされたみたいだった。

ポジションはまんなか、センターだね。さっきからなかなかたくさんフライが飛んできているけど、ちゃんとひとつも漏らさずに捕球してる。えらいぞ。しょうちゃんはヘタクソだって言ってたけど、きちんと野球少年だったんだなあ。


「川野さんこそ、あの子たちとはいっしょじゃないんだ?」


ミキとナミのことかな。ミキとナミのことだろうな。

へらりと笑って曖昧にうなずくと、水樹くんも同じようにへらりと笑った。