でも同時に、同じくらい、コワイって気持ちも生まれてしまった。


「みっちゃんは、消えないでいてね」

「うん?」

「みっちゃんのこと大好きすぎて、いつか消えちゃうかもしれないときを考えると……すごいこわく、なる」


伯父さんやおじいちゃん、壊れてしまったミキとナミのように。

自分でも情けないほど小さな声が出る。おまけに顔面を膝に押し付けているから、みっちゃんにきちんと聞こえているのかもわからない。


「みっちゃんだけは、消えないでいて」


もうほとんど、神への祈りだった。

神様お願い、みっちゃんだけは取りあげないで、たぶんもう、それ以外ほかにはなんにもいらないから。


「うん」


長い脚を投げだしてベンチに腰かけている、わたしだけの神様が、左側でふわりと答えた。


「ちゃんと傍にいるじゃん。消えないよ」

「うん……」


うん、みっちゃん。みっちゃんがいてくれてよかった。

くだらないわたしの人生で、みっちゃんという幸福を見つけられてよかった。


カッターナイフは全部捨てよう。そのかわり、みっちゃんの電話番号をケータイのショートカットに設定しよう。ワンプッシュで電話がかかるってやつね。


「みっちゃん、大好き」

「知ってる」


知っていてくれて、ありがとう。
受け入れてくれて、ありがとう。
傍にいてくれて、ありがとう。

きっとわたしはいま、みっちゃんを大好きだっていう気持ちだけで、生かされている。

そう言ったらまた、みっちゃんは涼しく笑うんだろうね。