「みっちゃん……」

「うん」

「う……あ、みっちゃ……」

「……うん、奈歩」


世界でいちばん安心するみっちゃんの腕のなか、わたしは勢いのまま、泣きながら全部話していた。ミキとナミのこと、お母さんとお父さんのこと、おじいちゃんのこと、伯父さんのこと――。

たぶん半分も伝わってなかったけど、頭のいいみっちゃんは自分なりに咀嚼して、理解しようとしてくれていた。それがまたうれしかった。



「奈歩は考えすぎ」


そしてそれが、第一声。

涙でぐじゅぐじゅになったわたしのブサイクな顔面を眺めながら、みっちゃんは笑った。そう、笑いやがったんだ、人がこんなにもぼろぼろに泣いているというのに!


「奈歩はなんにも悪くないだろ」


それでも、安っぽい慰めなんかしない、さらりと本物の言葉を発するみっちゃんに、わたしは変に安心してしまう。


「誰かのこと悪く言うより、自分のこと責めてるのが、楽なだけだろ。そういうやつってたまにいるよ」


心理学の先生みたいなことを言うなあ。みっちゃんはいつだって先生だね。普段は、あれだね、数学の先生。


「うん。奈歩はちょっと考えすぎだな」

「そうかなあ」

「そうだよ、ほんとにバカだな」


みっちゃんに言われるバカはぜんぜん嫌じゃない。愛を感じるから。こんなことを言ったらまたバカって言われそうだ。

わたしはベンチの上で体育座りをすると、膝に頭を埋めた。


「……伯父さんのこととか、いろいろね、はじめて人に話したんだ」

「そっか」

「うん……」

「そんで、ちょっとは楽になれたのかよ?」


楽に、なったのかな? どうだろう。楽とはちょっと違うかもしれない。やっぱり心の奥に沈んでいる恐怖みたいなものは消えないし、それはたぶん、誰になにを話したって、一生変わらないんだと思う。

でも……。


「あのね、みっちゃんのこと大好きだなって思った」

「なんだよ、それ」


こんなにも無防備になれる、『考えすぎな奈歩』がなんにも考えずにいられる、ただ子どものように笑い、泣いて、甘えられる。

そうやって自然体ですべてをすっと受け入れてくれるひとに、とても大切なみっちゃんに、わたしは出会えたんだなあって、心から実感したよ。そういう意味では、たぶん、楽になったよ。