やけに目につく白だった。
まるで隠れてでもいるかのように、それはカラフルなチラシの山のなかにひっそりと埋もれていた。
なんでもない無地の封筒。宛先と宛名はタテでなく、少し右上がりな横書き、そして温かみのある手書きだ。
『光村 大志 様』
どこかで見たことのある字だと思った。よく知っている字だと思った。
何気なく、手首ごとひっくり返してみる。差出人は、予想外すぎる気もしたし、はじめからわかっていたような気もする。
「……カワノ・ナホ」
書いてあるとおりをなぞるようにつぶやいた。瞬間、ぞわりと全身に鳥肌が立った。
冬の曇り空というのはどうしてこんなに重たいんだろう?
いまにも地上まで沈んできそうな灰色を見上げて、息苦しいような、ぎゅっとした気持ちになる。
だって――どうして、奈歩が。
「ほんとに本人なのかよ?」
いつもの倍速で脈打つ心臓を少しでも落ち着かせるため誰に言うでもなくそうつぶやき、白い封筒だけを持って家に入った。それ以外のものはほとんどゴミ箱に捨てた。
ひとり暮らしを始めてもう3年になるが、いまだにポストのなかをためこむ癖は治らない。