僕らの空は群青色のレビュー一覧
まるで映画でもみたような、読み終わった後の余韻に浸る。場面、場面の情景が自分の目に映り、二人の苦悩やひとときの夏を存分に楽しむ姿に泣いたり笑ったり。 夏目漱石のこころをなんとなく彷彿させ、学生の時に読んだ時の、あのえもいわれぬ感慨に、再び私は放心させられた。 適うならば是非とも映像化してほしい! ……と思わせる、素晴らしい作品でした。
最初の時点で友人の死が書いてあったので覚悟しながらどうなるのか読み進めていました。 それでも話が進むと日常に微笑んで ハラハラしながらその場その場に 引き込まれてました。 リアリティを感じるからこそ 感情移入が凄く言葉にするのが難しく感じながら書き込んでいます。 素敵なお話でした。
豊かな言葉選びに、かっちりしすぎない細やかな文章。そしてゆらりゆらりと読者を引き込む展開。 全部がすとんと入ってきて、読了後はまるで、恒と渡と同じ夏を駆け抜けたようなそんな気分でした。 また、学生から大人までというスタ文のテーマにあまりにもぴったりで、学生の方は辞書を引きながらでも読みたくなるだろうし、大人の方は携帯小説にたまに感じることがあるかもしれない物足りなさもこの作品では全く感じられないだろうな、と。 恒が渡を日向に連れて行くたび、私も恒とともに渡の心に触れられたような気がして嬉しくなり。そしてその反面、彼の運命を思うと心が痛くてなりませんでした。 でも、最後にあふれたのはさみしくて苦しい涙なんかではなく、優しくてあたたかい涙。 深空を愛し、そして恒の親友であった渡のことを、私もきっとずっと忘れられないと思います。
どこまでも精巧に練り上げられた、美しく表現豊かな文章で綴られた世界でした。 一冊の分厚い単行本を読んでいるみたいだった。世界の深さに、その深さを表す文章力と語彙力に、何度も感服させられました。到底わたしには書けない物語だと感じました。 よく見かける。声をかけた。そこから始まる、二人の友情。築かれていく、友情より家族に近い絆。深まる毎に、見えてくる影。 渡がその影を見せようと思えたのは、恒相手だったからなのだと思います。一言ではとても言い表せない壮絶な渡の過去に、渡自身に向き合えたのは、恒だったからこそなのだと思います。 一度だけで読み捨てることなどできない、大切なお話。けれど次読むときは本当に重みのある単行本で読んでみたい。そんな風に思える素晴らしい小説を、ありがとうございました。
大学一年生のころ、「僕」は渡に出会った。 どこか斜に構えて不機嫌そうで、影を背負ったような、独特な雰囲気の渡。 純文学をきっかけに次第に仲良くなった「僕」と渡は、ありふれた友達同士として、ひと夏をともに遊ぶ。 海へ行こう。 朝からママチャリを漕いで。 約束を交わす二人に訪れる悲劇に、胸を締め付けられました。 渡の背負った罪悪感と因縁、祈り、愛、悲しみは、彼自身の口からは決して饒舌には語られません。 本質的には明るい渡の諦めきった表情は、だからこそ、なおのこと強く印象に残ります。 一人の女性を愛した二人の青年の、ともに過ごした短い青春の記録です。