ノアの部屋に入ると、ちょうど彼の目が覚めたところだった。
「おはよう、ノア」
「おはよ。って、もう昼かあ。けっこう寝たな」
「飲み物とプリン買ってきたよ。食べる?」
「プリン!」
予想通りの反応にわたしは、ぷっと吹き出した。おにぎりのときといい、今回といい、ノアのスイッチは食べ物でオンになるらしい。
プラスチックのスプーンの上で揺れるプリンのかけらが、小ぶりなノアの口に運ばれていく。一口飲みこむごとに、彼の顔は幸福そうにふにゃりと溶けた。子どもか。
睡眠のおかげで体調がよくなったのか、ノアは食欲旺盛だった。実里さんが持たせてくれたサンドイッチと、商店で買ったドーナツもぺろりと完食。
「ごちそうさまでした」
ふたり同時に手を合わせる。そしてゴミの片づけをすませると、ノアは両腕を上げて「んー!」と大きく伸びをした。
その動作に合わせてTシャツのすそが上がり、引き締まったお腹がちらりとのぞく。思わず吸い寄せられた視線を、わたしはあわててそらした。