わたしはトモくんと背中を合わせるように、同じタイヤに腰を下ろした。

わたしの体重でタイヤのゴムが弾んで、「うひゃ」と少年らしい笑い声が上がる。


「ねえ、トモくん」


子ども特有の高い体温を背後に感じながら、声をかける。


「トモくんの好きな子……えっと、マナちゃんだっけ? かわいい子だよね」

「知ってんの!?」


トモくんが立ち上がり、赤い顔でわたしの正面に来た。


「うん、昨日ちょっとだけ見た。トモくんとマナちゃんがいるところ」

「そうなんだ」

「遠目だからはっきり見えなかったけど、髪が長くて、性格も明るそうで、かわいい子だなって思ったよ」


わたしがそう告げると、トモくんは唇をめいっぱい横に伸ばして、「うん」と嬉しそうにうなずく。りんご色に染まるほっぺが微笑ましい。


「俺のクラスの男子のほとんどが、マナちゃんを好きなんだ」

「それはすごいね」

「でも、マナちゃんはサトシと両想いだから」


トモくんが寂しげな笑みを落とす。