「勝也さん」


しぼり出した声は、ひどく震えていた。けれど、目線はしっかりと勝也さんの顔に合わせる。


「初めて勝也さんに会ったとき……わたし、その場所を踏んでしまって、すみませんでした。チャイムを押したんだけど鳴らなくて、窓の方から呼びかけようと思ったんです。知らなかったとは言え、本当にごめんなさい」


わたしは深々と頭を下げた。雪の積もった地面が視界に入る。

返事はないけれど、言葉を続けた。


「勝也さんは怒ってるのに、わたしは毎日やって来て、すごく嫌だと思います。でも、わたしがこの町にいられるのも、あと三日くらいなんです。
だから……お願いします。彼に会いに来るのを許してもらえませんか?」


固く握った手が、微かに湿っていた。こんな雪の日に汗をかいているのは、わたしくらいだろう。

沈黙が長くなるにつれ、その湿り気はどんどん増していく。