階段は廊下に出てすぐのところにあり、その下が作り付けの収納棚になっていた。
カレンダーを貼った扉を開けると、中には乱雑に物が詰めこまれていた。
左半分は四段の棚、右半分は縦に長い収納で、そこにホウキが立てられている。魔女が乗って空を飛びそうな古いやつ。
ホウキを取り出そうとしたとき、ふいに柄の部分が左の棚に当たった。その拍子に、四角い何かが床に落ちる。
拾って確認すると、それは小さなアルバムだった。
何の気なしにページをめくってみる。中に収められた写真は、どれも風景を写したものだ。
勝也さんが撮ったんだろうか。写真が趣味だなんて、ちょっと意外。
「あ」
その中の一枚に、見覚えのある建物が写っていた。今よりずっと新しくてキレイだけど、間違いない、この家を外から撮った写真だ。
家の周りには、今とは大違いのよく手入れされた庭が写っている。美しい芝生が太陽を浴びて輝き、その一角には青い花が咲いていた。
それはちょうど、勝也さんが『踏むな』とわたしに言った場所だった。
「あれ? この花って……」
何か引っかかる感覚が芽生えたけれど、それはすぐに引っ込んだ。家の外で門が開く音がしたからだ。
勝也さんが帰ってきたらしい。勝手に写真を見ていたことがバレたら、また怒られてしまう。
わたしはあわててアルバムをもとの位置に戻し、ホウキを持ってノアの部屋に引っ込んだ。