「じゃあ、トモ。自分のその気持ちを大切にしてあげよう。トモは、サトシくんが悪い子だなんて思ってないし、ましてやケンカがしたかったわけじゃないんだよね?」

「ん……」


トモくんの返事が涙で震えた。


「大丈夫。トモの気持ちはちゃんと伝わるよ。仲直りできたら、またサトシくんをうちに連れておいで。でっかいシュークリーム作ってあげるから」

「うん……!」

「よし。それじゃあ、顔洗ってらっしゃい」


パタパタと洗面所へ向かう足音は、すっかり軽くなっていた。

続いて背後から実里さんの足音が近づいてきて、わたしの隣に立つ。


「タマちゃん、ごめんごめん。洗い物任せちゃって」

「いえ……大丈夫です」


すでに食器は洗い終え、水切りカゴに並んでいる。それをぼんやりながめていると、「タマちゃん?」と実里さんがわたしの顔をのぞきこんだ。


「ボーっとしてどうしたの?」

「あ……」


わたしは我に返り、濡れたままの手をタオルでぬぐう。

それから、自分でもよくわからない頭の中をぽつりと話した。


「なんか、さっきの実里さんとトモくんの会話を聞いてて、うちと全然違うなあって思ったんです」

「タマちゃんちと?」