うちのお母さんはこういうとき、ぐうの音も出ないほどわたしを否定する。

「環のために言ってるのよ」とお母さんは主張するし、たしかに正論なのだけど、わたしは自分の気持ちが置いてけぼりにされて、もう何も言えなくなってしまう。

あの感じを今、思い出しているんだ。


こんな場面に居座るのも悪いと思い、わたしはキッチンで三人分の食器を洗うことにした。

カチャカチャという食器の音と流水音が鳴る中、実里さんの声が後ろから聞こえてくる。


「トモはきっと今、詳しいことは言いたくないんだろうね。けど、ママもやっぱり気になるし心配だよ」

「………」

「話してくれたら、ちょっと安心すると思うんだけど」

「……怒らない?」

「それはわかんない。でも、トモが何をしたかっていうことより、トモが何に悩んでるかを知りたいって、ママは思ってるよ」

「……サトシに」


消え入りそうな声で、トモくんが話し始めた。