わたしの心配そうな気配が伝わったのか、実里さんは簡潔に説明してくれた。

昨日の夕方、トモくんは友達のサトシくんという子とケンカになり、突き飛ばした拍子にケガを負わせてしまったらしい。普段はとても仲がいい友達だから、こんなことは初めてだそうだ。

昨日の夕方と言えば、わたしも、トモくんが女の子と遊んでいたのを見かけたんだ。

話の様子からすると、ケンカはあの後に起きたと思われる。たぶん、帰り道の途中でその友達に会い、何かトラブルが起きたんだろう。

そういえば夕飯のときも、トモくんは少し元気がなかったっけ。


「よりによって、こんなときに旦那がいないんだもん。まいっちゃうよ~」


実里さんがおどけたように舌を出した。

今朝の早くから、旦那さんは地元青年団の忘年会旅行に出掛けているのだ。

旦那さんがいない中、突然の出来事で実里さんも怖かっただろう。わたしだったら、オロオロして何もしゃべれないかもしれない。


「ところで実里さん、トモくんは?」

「まだフテ寝してる。とりあえず、朝ごはんにしよっか。匂いにつられてトモが起きてくるかもしんないし」