実里さんに電話を借りてもう一度家に連絡してみようか。そんな考えが浮かぶものの、まだ踏み出せない自分がいた。

理由は、至極単純なもの。

親に連絡すれば、連れ戻されるのが目に見えているから。

けれどそこには、“家に帰りたくない”という当初の気持ち以外に、もうひとつ“新しい気持ち”が芽生え始めているのを、わたしは自覚していた。

朝焼けを映して淡いピンクに色づく雪をながめながら、わたしは白い息をはーっと吐き出した。


……東京に帰ったら、もう会えないのかな。


チリチリと胸が焦げるような焦燥感。この感情は何だろう。


……せめて七日間が終わるまで、この町にいたい。


揺れる金色の髪を、無意識に思い描いていたわたしは、無理やりその映像をシャットアウトした。



   ***


「手首をネンザしたのよ!?」


階段を下りていくと、玄関の方から聞き覚えのない金切り声が聞こえてきた。