しばらく言葉もなく泣き続け、どのくらいの時間が経っただろう。

わたしは鼻をすすり、長い息を吐いた。

同時に涙を一粒こぼすと、まるで雨が止んだように、次の涙はもう出てこなかった。


「……なんか、ごめんね。ノアには関係ないことなのに、聞いてもらっちゃって」


幾分か落ち着いたわたしは、濡れた頬をふいて照れ笑いのような表情を浮かべた。

ノアは「ううん」と首を振り、そっとわたしの頭をなでる。


「関係なくないよ。もちろん、気持ち全部はわかんないけど、タマちゃんの辛かった想いが伝わってくるから」


……なんて、温かいんだろう。彼の手も、言葉も、瞳も。

わたしをわかってくれる人がいる。ただそれだけのことが、こんなにも温かい。

わたしはゆっくりと手を伸ばし、ノアのこめかみを伝う雫をぬぐった。


「ノア、髪まで濡れちゃったね」

「用水路の中で転んだから」

「わたしのこと言えないじゃん」

「ホントだな」


ぶるぶるぶるっ、といきなりノアが勢いよく頭を振り、水滴を四方八方に飛ばした。


「冷たい!」


わたしが叫ぶと、彼がへへっと笑う。屈託ないその表情に、心がほっこりした。

ああ、この温もりを、わたしは知ってる。
ひたすら幸福だった子どもの頃、いつも包まれていた感覚だ。