恋愛とは程遠い関係だったけど、だからこそ隣にいられるのだと思ってた。翼はずっと、彼女なんかいらないんだと思ってた。

バカなわたし。現実はどんどん移り変わるって、知っていたはずなのに。

わたしだけが変われずに、取り残されていた。ひとりぼっちで、必死で、抵抗していた。


「そっか。タマちゃんはそれが辛かったんだね」

「うん……」


うなずいて、けれど、そうじゃないかも、とふと思った。

ああ、そうだ。やっと今、気づいた。


「ううん……本当は」


本当は。何よりも悔しかったのは。


「自分の気持ちを言えない自分が、一番嫌だった……っ」


伝える勇気もないくせに、心の中だけで絶望して。拗ねて、ごまかして、あげくの果てにこんなところまで逃げてきた。

そう――わたしは翼たちから逃げたかったわけじゃない。

大嫌いな自分から、逃げ出したかったんだ。


すとん、と胸の中心に収まったその答え。
認めてしまえば、それはずっと前からわかっていたことのように思えた。

自覚は、きっとあったんだ。だけど認めたくなかっただけ。