しゃくり上げながら話すわたしの言葉は、きっと聞き取りづらいだろう。だけどノアは何度も相づちを打ちながら、耳を傾けてくれている。


「ずっと、好きな人がいて……高校で女友達ができて……最初は三人でいることが楽しかったの……っ。でも、わたしの知らないうちに、二人が付き合ってて……っ。全部、変わっちゃった……失恋したことより……自分たちが変わってしまったことが、辛かった……っ」


高望みをしたわけじゃない。ただ、そのままでいたかっただけ。

なのにどうしてだろう。続いてほしいと願うものほど変わってしまう。

子どもの頃からそうだった。昔は、家族で笑い合えた。

お父さんがいて、お母さんがいて、犬のノアがいた。わたしは間違いなく、幸せな子どもだった。

なのに、それはいつのまにか変わってしまった。

両親の仲は悪くなり、ノアも死んだ。

家の中はいつも神経が張り詰めて、息をしても酸素がうまく吸えなくて。

そんなとき、中学で出逢ったのが翼だったんだ。


――『お前といると楽でいいよ。女子はめんどくせえもん』

――『って翼、わたしのこと何だと思ってんの』

――『えーっと、男兄弟?』

――『おかしいでしょ、それ!』