女の子に腕を引っ張られ、渋々帰っていくトモくん。「つまんねーの」と言いながらも、その声にはどこか嬉しさがにじんでいる。
なるほど。トモくんは、あの子のことが好きなんだな。そのかわいらしい光景に、わたしは微笑ましさを感じる。
と同時に、胸がちくりと痛んだ。
……頭をよぎったのは、翼のこと。今のふたりのやり取りが、まるで中学時代の自分と翼みたいだったから。
あの頃、翼が悪さをしようとするたびに、たしなめるのがわたしの役目だったっけ。
それを見た同級生たちが「カカア天下の夫婦だな」と冷やかしてきて。
翼は「誰が夫婦だよ」って否定しながらも、いつも隣にいてくれた。
だから、わたしは愚かな勘違いをしてしまったんだ……。
そっとバッグを開き、わたしは一番底にしまいこんだ封筒を出した。そして、中の写真の束を手に取る。
カメラのフレームに切り取られ、永遠に止まった時間たち。どの瞬間もまだ、思い出と呼ぶには鮮明すぎる。
大好きだった。
大切だった。
だけど、わたしは逃げ出してしまった――。
胸に突き刺さるような痛みを覚え、キュッと唇を噛んだ、そのとき。