元気だなあ……。
わたしはあきれつつ、とりあえずその場で待つことにした。
立ち止まっていると、さっきまであまり気にならなかった寒さが急に身に染みた。
山からの吹きおろしの風が、コートの襟口から入ってきて身震いをする。マフラーを部屋に置いてきたことを少し後悔した。
どこからともなく流れてくる、夕焼け小焼けのメロディ。午後5時を知らせる合図らしいその放送は、東京では聞く機会のないものだ。
今、自分がとても遠い場所にいる。それを強く実感した。
「トモくん、そっち行っちゃいけないんだよー」
ふいに女の子の声が聞こえ、わたしはそちらに目をやった。
わたしが立っている道の先に、ふたつの小さな影。ひとりは男の子で、もうひとりは女の子らしい。
男の子の方は、実里さんの息子のトモくんだった。
わたしは、森に行っていたことがバレるとまずいと思い、神社の塀の陰にかくれた。
「もー、トモくん。森に入っちゃいけないって、先生にも言われてるでしょ」
「大丈夫だって」
「ダーメ。ほら、行くよ」
「ちぇー」