わたしたちは意気揚々と再び歩き出し、三十分ほどで小川の下流にたどり着いた。

こけの生えた大小様々な岩の間を、細長く清流が流れている。

水の音を聞いたとたん、わたしはとても喉が乾いていることに気づいた。ついでにお腹の虫も鳴った。

もう正午はとっくに過ぎているだろう。

わたしたちはこの場所でひと休みすることにした。実里さんが持たせてくれた昼食をバッグから取り出すと、ノアの目が一気に輝いた。


「おにぎり!」

「多めに作ってもらったから食べてね」


わたしが言い終わるや否や、ノアがおにぎりにかぶりつく。それを微笑ましく見ながらわたしも一口食べると、絶妙の塩加減が口の中に広がった。

続いてバッグから、温かい麦茶を入れたマグボトルも取り出す。こんなものまで用意してくれるなんて、実里さんはさすがお母さんだと思う。

麦茶は思いのほか熱く、思わずわたしが「あちっ」と漏らすと、「さすがタマちゃんだな」とノアが面白そうに言った。

タマだから猫舌って言いたいのか。自分だってワンコ男のくせに。

からかわれたわたしは唇を尖らすけれど、それを見つめるノアの瞳はやさしい。

自然の中で食べる昼食は特別においしくて、わたしはお腹と心の両方が満ちていくのを感じた。


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