長い年月をかけて育まれてきた森の中を、ふたりで足並みそろえてゆっくりと歩いていく。

地面を踏むたびにザクザクと小気味いい音がして、腐葉土のような匂いが立ちのぼった。

木の葉のすき間からこぼれる光が、ノアの髪の上で揺れている。

無数の鳥たちのさえずりは、わたしたちを歓迎しているようにも聴こえた。


「あ、これ、見たことあるかも」


しばらく歩いていると、記憶の欠片と合致する木を見つけた。

周囲でもひと際目立つその大木は、巨塔さながらの迫力を放っている。地面から盛り上がった太い根っこは、ポパイの腕みたいだ。

そして何より特徴的なのは、根元にぽっかりと空いた洞(ウロ)。

子どもの体が完全に収まるほど大きい空洞で、八歳のとき「隠れ家だ!」と言って大喜びしたのを覚えていた。

さすがに今はもう入れないけれど、顔だけ入れて中をのぞいたわたしは、あのときと同じ木だと確信した。

空洞の一番奥に、大人のコブシほどの大きさの石が数個積まれている。

あれは、当時わたしがおままごとをして持ち込んだ石に違いない。


「すごい。あの日のままだよ」


おぼろげだった遠い日が、急に目の前に実体化して、わたしは感動した。

ノアが一緒だから見つけられたんだ、なぜかそう思った。


「宝探し、一歩前進だな」


ノアの言葉にうなずく。