乾いた土の匂い。
やさしい風。
遠くにある太陽。
隣にいるノア。

叫びすぎて、笑いすぎて、胸に詰まっていた黒い塊までどこかに飛んでいったみたいだ。


「スッキリした?」

「うん」

「よかった。じゃあ、行こっか」


どこに? と尋ねると、ノアは得意げな顔でこう答えた。


「宝探し。タマちゃんが昔見た、キレイな景色を探しに行こう」


  ***


まさか再びこの森に入ることになるとは、思っていなかった。一緒に探してあげると昨日言われたことも、すっかり忘れていたし。

また迷子になったらどうしよう。そんな心配が胸をかすめたけど、「俺がいるから大丈夫」と言うノアに根拠もなく安心した。

本当にノアがいれば大丈夫だと、なぜか信じられた。


森の入り口のフェンスを先に超えて入ったノアは、くるりとこちらを向いて両腕を広げた。

どうやら、後から入るわたしを受け止めるための姿勢らしい。


「……別に大丈夫だよ。転ばないから」

「タマちゃんが言っても説得力ないよ」

「失礼な」