友達の中にも、家族の中にも、自分のいるべき場所なんてなかった。
みじめで、こんな本音は誰にも言えなくて、よけいに居場所がなくなって。
「出逢わなきゃよかったんだ……っ! 美那子なんかに出逢わなきゃ、翼は今でも……!」
今でも、わたしの居場所だったはずなのに――。
ジャリッ、と砂のこすれる音がして、振り返るとノアがいた。
「あ……」
いつからそこにいたのかは、わからない。けれど、かすかに見張った彼の瞳から、さっきの言葉を聞かれてしまったことは確実だった。
何か言い訳をしなくちゃ。そう思うのに、声が喉にはりついて出てこない。
聞かれたくなかった。誰にも聞かれたくなかった。
あんなドロドロの、わたしの感情は――。
「タマちゃん」
そのとき、ノアの表情が和らいだかと思うと、突然目の前が白いもので覆われた。
えっ、何これ? なんかちょっと冷たいしっ……。
「一枚忘れてたよ」
視界の外から聞こえた声で、やっと気づいた。白いものの正体は、洗ったばかりのバスタオルだ。
「あ、ありがと……。ってか、なんで投げんのよ」
わたしは抗議しながら、視界を覆うタオルを取り去り――そして、息が止まった。
すぐ目の前にノアの顔があったから。
わたしをのぞき込む、イタズラっ子のような黒い瞳。