A組の……ということは、同じ学校の一年生なんだろう。そういえば、なんとなく見たことがあるような。
端正といえば端正だけど、おとなしめの顔。高くも低くもない身長。長くも短くもない黒髪。
ハッキリ言ってどこにでもいるタイプで、目立つ方では決してない。
すみません、ほとんど知りませんでした。
とは、さすがに言えるはずもなく、わたしは無難に自分の名前だけを告げた。
「小林 環です」
「あ……山下 雄大です」
お互い小さく会釈すると、微妙な沈黙が漂った。
助けを求めるように横目で翼を見ると、なぜか翼の唇がニヒィッと横に伸びている。何だ?
「ねえねえ、もう新幹線到着するって」
「マジか。急ごうぜ」
美那子にうながされ、わたしたちはバタバタとホームへと向かった。
***
東京のビルの合間で窮屈そうにしていた空が、羽を伸ばすように広がっていく。
新幹線の窓越しに移り変わる街並み。ひたすら横へ横へと流れる景色を見ていると、絵巻物のような細長い世界をながめている気分になってくる。
「ドキドキするねー」
通路をはさんだ席に座る美那子が、はあっと息を吐いた。
「旅行なんて久しぶりだもん」
「お前、バイトってこと忘れてるだろ」
「覚えてるよー、もう!」