すすぎまで終われば、あとは脱水だ。もちろん、手でしぼる。
濡れたタオルの端と端を、わたしとノアがそれぞれ持って、「せーの!」の掛け声でお互いに逆方向へ腕を回した。ばしゃばしゃーっと勢いよく落ちていく水が爽快だ。
「よし、完了」
すべての洗濯物を終え、達成感でわたしは大きく息を吐いた。
「ありがと、タマちゃん」
「ううん」
ノアも最初にわたしを助けてくれたとき、わたしの服を洗ってくれたんだ。少しでもそのお返しになっていたらいいな。
「タマちゃん、手、赤くなってる」
「え、そう?」
そのとき、ノアがわたしの冷えきった手を握ったかと思うと、そっと自分の口元へと運んだ。
はーっ、と手の甲に吹きかけられる温かい息。
その動作があまりにも自然だったから、わたしはされるがままだった。彼の優しい表情に、視線が吸い寄せられる。
そして、ハッと気づき、あわてて手を引っこめた。
「ほ、干してくるね。ノアは休んでて」
わたしは洗い終えた洗濯物を抱え、ドタバタとお風呂場を出た。