素直すぎる反応に、つい顔がほころんでしまう。おそらくわたしと同年代のはずが、こうしていると子どもみたいだ。
そしてノアはノートの新しいページを開き、大きな文字でこう書きこんだ。
≪今日は、いい天気。気もちいいね。タマちゃん≫
「ふふ。ホントだね」
十二月なのに春が顔を出したような陽気。さわさわと揺れる葉っぱの音色。
やわらかい日差しがノアの頬に注ぎ、うぶ毛が透けてキレイだと思った。
「こんな日は洗濯日和だよな」
突然ノアがそう言って、洗濯をするために立ち上がったので、わたしも手伝うことにした。
驚いたことに、この家には洗濯機がなかった。
今時そんな家庭があるのかとビックリしたけど、この家の持ち主は変わり者っぽい勝也さんだから、ある意味納得かもしれない。
生まれて初めての、タライで手洗い体験。場所はお風呂場だ。
水の冷たさもあり最初は少し戸惑ったけど、やっているうちに楽しくなってきた。
そういえば子どもの頃は、泥んこ遊びで服を汚すと、お母さんがこうして手洗いしてくれたっけ。
「あ……」
タライの中からふわふわとシャボン玉が飛んだ。七色のそれはまるで遊んでいるようにノアに近寄り、彼の鼻先でパチンと弾けた。
なんだか面白くて、わたしたちは顔を見合わせて笑った。