「えっと……具体的にはおいくらですか?」


恥ずかしながら、あまり持ち合わせがないのだ。恐る恐る尋ねると、旦那さんの口から出たのは信じられない破格だった。


「JK特別価格で、メシ付き一泊三千円」

「ほっ、ホントですか!?」

「実里、いいよな?」

「ん? いいよー」


あっけらかんと実里さんが答えた。


「別にひとり分の食事が増えるだけだし。あ、でも普通にわたしたちが食べてるのと同じにするから、期待しないでね」

「じゅうぶんです、ありがとうございます!」


思いもよらない幸運だ。目の前に光が射した気がした。

それは、逃げ道を照らすだけの光だとわかっていたけれど、わたしはまだ逃げていたかった。


   ***


昼食は具だくさんの焼きそばをご馳走になった。

野菜は旦那さんの畑で採れたものだ。この辺りの人は兼業農家が多く、旦那さんのムキムキ筋肉も畑仕事の賜物らしい。

わたしは格安で泊まらせてもらってる分、せめてものお返しにと、洗い物や掃除を手伝うことにした。

「わあ、助かる~」と膨らみかけのお腹をなでながら喜ぶ実里さんに、こちらも嬉しくなった。


そして、午後。

わたしは今朝下ってきた山道を、再びひとりで歩いていた。

目的地はもちろん、あの家だ。