こんなおふたりの子どもだから、きっとトモくんも伸び伸びと育っているんだろう。
幸せそうな家族を前に、わたしは胸が温かく、だけど少しチクッとした。
「ねえ、この町にいつまでいんの?」
トモくんがわたしの袖をつかんでたずねてきた。聞かれるまでそのことが頭から抜けていたので、言葉に詰まる。
「特に決めてはないんだけど……」
本来ならあと六日、わたしはスキー場でバイトをすることになっているのだ。
「ていうか、もしかして一人旅の途中?」
実里さんの質問に、わたしはとっさに「はい」と答えた。
「学校は?」
「冬休みです。うちの高校は二十日が終業式だから」
「そっか~、いいなあ。わたしも学生のころ、一人旅してみたかったんだよね。でも親に許してもらえなくて」
親、という単語を聞いたとたん、鉛を飲んだように胸が苦しくなった。
思い浮かぶのは、わたしを否定するばかりの言葉、両親のケンカの声。
帰りたくない。そう思った。まだ、帰りたくない……。
すると、台所から戻ってきた旦那さんが言った。
「もし行くところが決まってないなら、ここに泊まっていきなよ。格安にしとくから」