十畳ほどの和室に、襖一枚分はありそうな木のテーブル。
お客さんがいるときは一緒に食事するから食卓を大きめにしてるの、とギャルママさんは言った。
「遠慮せずに食べて」
戸惑うわたしの前に、おいしそうな朝食が次々に並んでいく。
鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたし、根菜の煮物、五穀米、とろろ昆布のすまし汁……。
ていねいに作られた和食は、まさにおふくろの味で、彼女がこんな料理を作るなんて意外だった。と言ったら失礼だろうけど。
「すっごく、おいしいです」
「ホント? 嬉しい。めったにお客さんが来ないから、作り甲斐がなくてさぁ」
そう言ってギャルママさんがケタケタ笑う。
このあたりは冬場になると川で釣りもできず、スキー場からも遠いため、ほとんどお客が来ないそうだ。
「でも、N県の中では雪が少なくて、いい所なんだよ」
ギャルママさんが少し誇らしげに言って、顔をほころばせる。
朝食をとりながら、彼女はいろんな話をしてくれた。
名前は実里(ミノリ)さん、年齢は二十八歳。高校卒業と同時に結婚し、この民宿に嫁いだらしい。現在、二人目を妊娠中。
そして息子さんはトモくん、わんぱく盛りの小学三年生だ。
「こいつがホント、誰に似たのかヤンチャでさ。こないだも子どもだけで森に入ろうとして、先生に叱られたの」