「いらっしゃい。ひとり?」
「いや、えっと……」
気まずい展開になってしまった。いくら誤解とは言え、これじゃ冷やかしみたいだ。
言葉を探してまごついていると、その様子からギャルママさんは事情を察してくれたらしい。ごめんね、と彼女の顔に苦笑いが浮かんだ。
「どうやら、うちのバカ息子が無理やり連れてきたみたいだね」
「いえ……」
すみません、と謝ろうとした時だった。突然、耳を疑うような豪快な音が轟いた。
ゾウのイビキのようなその音の出どころは、まぎれもなくわたしのお腹。
「すっげえー!」
男の子になぜか尊敬のまなざしを向けられ、わたしの顔は真っ赤に染まる。ギャルママさんも明らかに笑いをこらえているし、恥ずかしさで湯気が出そうだ。
「し、失礼しましたっ」
「あー、ちょっと待って!」
出て行こうとしたところを、ふいにギャルママさんに呼び止められた。
「朝ごはん、一緒に食べてかない?」
「え……?」
「旦那が二日酔いで食べないらしくて、あまってんのよ」
「で、でも」
「でももだってもスイカもない! ほら入って」
それを言うならヘチマでは。と心で突っこんでいるうちに、わたしはギャルママさんと息子さんによって、家の中へと連れて行かれた。
どうやら、強引なのは血筋らしい。
***