飾り気のない黒髪の、素朴な顔をした少年。彼が立っているのは、真新しい保育園の門の前だった。
「おはよう」
「おはよう。雄大くん、こんなところでどうしたの?」
「ちょうど今、妹を送ったとこだったんだ」
「そっか。小さい妹さんがいるって言ってたもんね」
って、そんな話をしている場合じゃない。雄大くんには、お礼とお詫びを伝えなくちゃいけないのだ。
わたしは自転車のスタンドを立てて、体ごと彼に向き直った。
視界の真ん中に雄大くんがいて、視界の下半分を園児たちがぞろぞろ歩いている。なんだか不思議な状況。
「あの……冬休みのことだけど、本当に迷惑かけてごめんなさい」
せんせー、おはよー! と元気にあいさつする園児の声に、わたしの声は少しかき消される。
それでも雄大くんは、ちゃんと聞き取ろうと、きまじめな顔でこちらを見てくれている。
「美那子から聞いたんだ。雄大くんがわたしのこと、すごく探してくれてたって。嬉しかった……ありがとう」