ひとり立ち尽くすわたしの目の前に、突如として草原の景色が広がった。
遠くの方で、小さな影がふたつ並んで動いている。わたしは目をこらした。
ノアだった。クリーム色の毛をなびかせて、草原を無邪気に駆けまわる犬のノア。
そのとなりには、そっくりの犬がもう一匹いる。きっとあれがノアのお兄ちゃんの、直太朗くんなのだろう。
『会えたんだ……』
大地の彼方に、アーチを描く七色の光彩が見えた。
その光へと導かれるように、ノアと直太朗くんは駆け出してゆく。
じゃれ合いながら、飛び跳ねながら、風のように奔放に――。
……ああ、そうか。
ノア。今は自由な体なんだね。君はもう、あの虹のむこうに行くんだね。
遠く小さくなる後ろ姿がまぶしくて、心が震えてしかたなかった。
わたしはまばたきもせずに、その光景を最後まで目に焼きつけた。