そんなわたしの横を、一組のカップルが通り過ぎた。派手な格好をしたそのカップルの男性は、金髪だった。

わたしは無意識にその色を目で追った。


「環?」


急にぼんやりしたわたしを、美那子が不思議そうに見る。


「どうしたの? 環の知り合い?」

「あ、ううん」


わたしは笑顔をまとって返事をした。

……騒がしい、東京の日常のかたすみで。今でもわたしは、あの愛しい姿を探してしまう。

もう二度と会えない。
だけど君の存在が、この心から消えることはない――。



   ***



「ごちそうさまでした」

その日の夕食はコロッケだった。昨日の肉じゃがをリメイクしたやつ。

わたしが作ったので見た目はいまいちだったけど、お父さんは「おいしい」と言って四つも食べてくれた。


「環、洗い物はお母さんがするわ。明日から新学期だし、今日は早く休みなさい」

「はあい」