「わたし、翼たちにもうひとつ言わなきゃいけないことがあったんだ」
「え、何?」
「N県でのバイトの空き時間に、わたしのこと探してくれてたんだよね? お母さんから聞いたよ。本当にありがとう」
その言葉を聞いたふたりの顔が、きょとんと固まる。
それから、少しの間をおいて、美那子が意外なことを口にした。
「それ、わたしたちじゃないよ。雄大くんだよ」
「……雄大くんが?」
「彼、N県に親戚がいるから、土地勘が少しあるらしくて。バイトの休憩中とか、終わったあととか、環のこと探し回ってくれたんだ」
わたしの脳裏に、黒髪のおとなしい少年の顔が浮かぶ。
彼がそこまでわたしのことを心配してくれていたなんて、思ってもみなかった。だって、特別に仲がいいわけでもないのに……。
その戸惑いを察したのか、翼が急に真剣な顔になって口を開いた。
「あいつ、環がいるからバイトに参加するって決めたんだぜ」
「え……?」