美那子は気づたのかもしれない。わたしが翼を好きだったことを。
ふと表情に陰りがさした彼女に、わたしは首を横に振ってから言った。
「あのね。わたし、翼と美那子に嫉妬してたんだ」
「え?」
「二人が付き合ったことで、仲良し三人組が壊れちゃう気がして」
翼への過去の恋心は、もう言う必要のないこと。だけど、これからも三人で仲良くしていきたい。
だから今、ちゃんと言わなきゃいけない気持ちがあるんだ。
「これからもわたし、ふたりと友達でいたい」
その瞬間、翼と美那子の唇が、おそろいみたいにへの字に曲がった。
「友達だよ、当たり前じゃん!」
ふたりの声が見事に重なる。まったくもう、こいつらはお似合いのカップルだ。
「そっか……よかった」
「何がよかっただよ、ばかじゃねーの、環」
「ばかって言うな、バカップル」
「はあ? バカップルって誰がだよ」
「自覚ないのがバカップルだって言うの」
くだらない言い合いをするわたしと翼を、美那子がクスクス笑いながら見ていた。