受話器の向こうで目を丸くして驚いている姿が浮かぶ。

無理もない。六年も前に会ったきりの、旧友の娘からいきなり連絡がきたのだから。


電話の相手はサユリさん。あの町の近くに住む、お母さんの幼なじみ――そう、ノアを十歳のときに引き取ってくれた女性だ。


「実はサユりさんに、お話があって……」


わたしは彼女に、ノアのことを話した。

不思議な体験については、さすがに話せなかったけど、あの町でノアと過ごしたこと、そして天国へ見送ったことを、何度も言葉に詰まりながら伝えた。


「そう……あの子、ひとりで隣町に……」


電話ごしに聞こえる、鼻をすする音。


「急にいなくなったから心配してたけど、今、環ちゃんから聞いて安心したわ。……あの子、大好きな人に会いに行ったのね」


寂しさと嬉しさの混じった声で、サユリさんが言う。わたしは受話器をぎゅっと握った。


「サユリさん。わたしだけがノアの最期を見届けて、すみませんでした」

「ううん、どうしてあやまるの? それがノアの幸せだったのよ。きっとあの子、今頃は満足して、直太朗と天国で遊んでるわね」

「直太朗?」

「ええ、ノアの双子のお兄ちゃん。すっごく仲良しだったから」