ふと、お父さんとお母さんが、わたしを間にはさんだ距離で遠慮がちに目を合わせた。それからふたりとも眉を下げて、ほんの少し微笑んだ。
こんな両親を見るのは、いつぶりだろう。
わたしたち、今からやり直せるのかな。
時間をかけてもつれた糸は、簡単にはほどけないだろうけど。きっとまた、ぶつかってしまうだろうけれど。
もし、そうなってしまったときは、何度でも自分の心にたずねよう。
“わたしの本当の気持ちは何?”
答えはきっと、いつも同じはず。
“この家族のことが大好きだ――”
「さあ、帰ろう」
お父さんがわたしの背中を、そっと車の方へと押す。お母さんがドアを開けてくれて、後部座席にわたしとお母さんは並んで座った。
「今夜は環の誕生日パーティーだな」
その言葉を合図に、エンジンをかけるお父さん。かすかな振動が体に伝わり、車がゆっくりと走り出す。