「あのね、わたし……お父さんも、お母さんも、大好きだよ」
わたしの世界は愛しいものであふれている。
そう気づかせてくれたのは、ノア、君だったんだ。
木の葉がどこからか舞ってきて、わたしの肩にそっと降りた。真上にのぼった冬の太陽が、お父さんとお母さんの顔にやわらかい影を落としている。
「……じゃない……」
ふいに、お母さんが低く震える声で何かを言った。聞き取れず、「え?」と聞き返す。
「お母さんも、環のことが好きよ……っ、娘なんだから当たり前じゃない!」
涙を目にいっぱいためて、お母さんはそう言った。普段は気丈なお母さんの、初めて見るその表情に胸がぐっと詰まった。
「お父さんもだぞ。環のこと、大好きだ」
ああ、お父さんまで泣いちゃった。
そうだ、わたしのお父さんはとても涙もろくて、ドラマとか見ても真っ先に泣いてしまう、心やさしい人だった。