お母さんの言葉は、ぐうの根も出ないほどの正論だった。この町に逃げてくる前のわたしが、「きっとお母さんはこう言うだろう」と想像したのと、ほぼ同じ。

ずっと、これが苦手だったはずなのに。お説教が大嫌いだったはずなのに。

自分でも不思議なんだ。叱られることが、今はこんなにも嬉しくて。


「ふふ……」

「な、なにを笑ってんの」


つい肩を揺らしたわたしに、お母さんが怪訝そうな顔をする。


「笑うとこじゃないでしょ、環!」

「ごめんなさい」


わたしは嬉し涙のにじむ目尻をぬぐった。そして、すうっと息を吸いこむと、両親の顔を交互に見た。


「お父さん、お母さん、本当にごめんなさい」


こうして向き合うのは初めてで、にわかに鼓動が速くなる。真剣な様子が伝わったのか、両親の顔にも緊張が走った。


「わたしね、言いたかったことがあるの……」


手のひらに汗がにじみ、口の中が乾いてくる。がんばれ、がんばれ、と自分を奮い立たせる。