当時は勝也さんが健在で、庭の手入れもよくしていたのだろう。今の荒れた様子からは想像できないくらい、木々がきれいに刈り込まれ、美しく整えられた庭。
そして、その庭の一角に、ある花が咲いているのが写っていた。
「葵――お母さんと同じ名前の花です」
ぐ、と喉の詰まるような音が、勝也さんの口からもれた。目のふちが、少し赤く染まっている。
「わたしが踏むなと怒られた、あの場所に咲いていたのが葵の花だった……。
同じ名前の花を大切に育てるくらい、ほんとはお母さんのこと、大切に想ってたんだよね?」
無意識に言葉遣いが変わっているのが、自分でもわかった。
この人は本当に、わたしのおじいちゃんなんだ。お母さんとすれ違ったまま死んでしまったけれど、本心ではお母さんのことを、たったひとりの娘として愛していたんだ。
「でもね、おじいちゃん……。お母さんもおじいちゃんのこと、大切に想ってたんだよ」
「……え?」