手紙と瓶をバッグに入れて、再び前を向いて歩き出す。
記憶に導かれるように、わたしはどんどん歩を進めた。
本当だね、と心の中でノアに語りかける。
本当にわたし、ちゃんと覚えてたよ。お父さんとお母さん、そして君と歩いたこの森。
何ひとつ忘れてなんてなかった。遠い日の幸せは、消えてなんていなかった。
小川のせせらぎ、切り取ったように平たい岩……
わたしはあの日と同じ場所をいくつも見つけ、そのたび、ノアの手紙も見つけた――。
『タマちゃん、だいぶ思い出してきたみたいだね。
この小川でシャンプーごっこしたのは、おぼえてる?
さむいから川の中には入れなかったけど。
そういえば、おうちでもタマちゃんは、おれのシャンプーがかりだった。
きみの手はあったかくて、きもちよかったなあ』