しばらく進むと、雑草のかげにたたずむ小さな祠があった。
この場所……見覚えがある。八歳のときもここを通ったはずだ。
そう思った次の瞬間、祠のそばにまたあの小瓶が置いてあるのを発見し、わたしは小さく笑った。
ノアのやつ、手の込んだことを。いったい、何箇所に仕込んだんだろう。
彼のしたり顔を思い描いて頬をゆるめながら、瓶の中の手紙を読んだ。
『さすがタマちゃん! いいかんじで、すすんでるね。
タマちゃんはあの日、もっていたおかしを、ここにおそなえしたよね。
それから、手をあわせたね。
きみはあのとき、何をおいのりしていたんだろう。
おれは、タマちゃんがいつも笑顔でいられるようにって、いのったんだ』
「……ばかだなあ、ノア」
自分のことをお祈りすればいいのに、君はやっぱりわたしのことなんだね。
ほんと、ばかみたいに純粋で健気で……そんな君とずっと一緒にいられるようにって、わたしはあのとき祈ったんだよ。