見上げてもてっぺんが見えないほどの、巨大な木がそこに立っている。根元には、ぽっかりと口を開けた洞。

そう、子どものころ「隠れ家だ」と言ってノアと一緒に遊び、そしてつい先日もノアとたどり着いた、あの木だった。

でもなぜ、勝也さんはここで足を止めたんだろう――その疑問を解くより先に、洞の中でキラリと何かが小さく光った。

わたしは木の根元にしゃがみこみ、洞をのぞきこんだ。

奥の方には、わたしが昔積んだ石があいかわらず残っている。
そしてその手前には、小瓶らしきものがひっそりと置いてあった。


見覚えがある……あれは、ノアの部屋にいくつもあった小瓶だ。

そう思い当たった瞬間、自分でも驚くほどの素早さでそれを手に取っていた。

ガラス製の瓶の中に、メモ用紙らしき白い紙が、丸めた状態で入っている。

どくどくどく、と心臓が早鐘を打った。震える手で紙を取り出して、開いたと同時に胸が詰まった。