勝也さんが森の奥へと歩き出し、その後ろをわたしも黙って歩いた。
様々な種類の落ち葉が、地面をまだらな色に染めている。おしゃべりするように鳴き合う、無数の鳥たち。
ノアがいるときはワクワクできた森も、今はだだっ広い荒野にひとりぼっちで取り残されたような気分になる。
涙がじわりとにじんで、隠すようにマフラーを鼻の上まで引き上げた。
それにしても本当に、勝也さんはどうしてわたしを連れてきたんだろう。
ノアの思い出が詰まったこの場所は、今のわたしにとって辛すぎるのに……。
と、そのとき、勝也さんが急に足を止めた。
ぼんやりしていたせいで彼の背中にぶつかりそうになったわたしは、「わっ」と小さく声を上げてストップした。
「び、びっくりしたあ」
視界を覆う大きな背中から、顔を出す。
すると、思いがけないものが目の前に現れ、心臓をわしづかみにされるような感覚を覚えた。
「この木……」