「ねえ、知ってる?」
視線を戻したわたしに、透き通るような声でノアが言った。
「俺も、同じ誕生日なんだよ」
「え……?」
「俺はタマちゃんと同じ日に、タマちゃんが生まれた病院の庭で、生まれたんだ」
知らなかった。物心ついたときには、ノアが家にいるのが当たり前だったから。
「タマちゃんのお父さんが、俺を見つけてくれたんだよ。一緒に生まれた兄貴は、サユリさんっていう人の家に引き取られ……そして俺は、タマちゃんの家族と暮らすことになった」
今にも消え入りそうな声をしぼり出し、ノアが懸命に語る昔話が、わたしの胸にしみこんでいく。
十六年前の今日。きっとわたしたちは、あふれるほどの笑顔に包まれていた。
「タマちゃん……俺たちは、一緒に成長したね。いつもふたりで遊んで、たまにイタズラして叱られて。俺の世界には、どんなときでもタマちゃんがいたんだ」
「ノ、ア……」
涙がぼとぼと、こぼれていく。
そうだよ、ノア、いつも一緒だったじゃない。だから行かないで……わたしをおいて行かないで。