……コチ、コチ、と規則正しく時を刻む秒針とともに、わたしは目を覚ました。

時計の音以外は消えてしまったかのような静けさ。

座ったままの無理な体勢で眠っていたせいか、体の節々が痛い。部屋を見回すと、勝也さんの姿はなかった。


ベッドの上に視線をゆっくりと戻す。

と、さっき夢で見ていたのと同じ、まんまるの黒い瞳がそこにあった。仰向けに寝て顔だけこちらに向けたノアが、わたしをじっと見つめていた。


「ノア。起きてたの?」


問いかけて、そしてハッとした。彼の表情が、あまりにも安らかでキレイだったから。

雲ひとつない空のように澄みきって、波ひとつない海のように穏やかで。

その顔を見た瞬間、わたしの心臓がどくんと跳ね上がり、すべてを悟った。


ノアの命が、最後の火を灯している。

とうとう“その時”が来たのだと。


「ま、待って……っ」


お願い、待って。まだ行っちゃ嫌だ。

鼓動が急激に速くなり、気持ちばかり焦ってうまく言葉にならない。

どうすればいいの? いったいどうすればノアの命をつなげるの? 探しても見つかるはずのない救いの方法を、必死で探そうとする。

そんなわたしの感情すらも丸ごと包みこむように、ノアは清らかに微笑んだ。


「タマちゃん。お誕生日おめでとう」


息をのみ、時計を見上げた。二本の針が重なって、数字の十二を指している。

この町に来て七日目――

わたしは十六歳になったんだ。