ノアの冷たい指が頬に触れ、涙をぬぐう。その指に自分の手を重ねると、力いっぱい握りしめた。

……神様。神様。神様。

どうかもう一度だけ、奇跡を起こしてください。

ノアを連れて行かないでください――。



   ***


漆黒から紺色へ。やがてピンクのグラデーションが混じり、そして透明な水色へ。

窓に切り取られた空は、時とともに色を移していった。

東向きのこの部屋には、朝陽がふんだんに注がれる。ただでさえも白いノアの顔を照らし、より一層白く見せていた。


この町で迎える六日目の朝。ずっとまともに寝ていないせいで、時間の感覚がおかしくなりそうだ。

ノアはほとんど眠ったままで、時々、苦しそうにうなり声を上げた。

そのたびにわたしは背中をさすったり、水を飲ませたり、励ましの言葉をかけ続けたりした。