「いいかげんにしてよ、ノア。変なこと言わないで。犬だなんてっ……ばかなこと言わないでよ!」


一息に叫ぶと、頭が酸欠でくらくらした。わたしはふらつく足元をにらみつけ、大きく息をする。

その呼吸に重なるように、彼の寂しげな声が、ぽつりと落ちた。


「ごめん……俺が、人間じゃなくて」


わたしは弾かれたように顔を上げた。

切なく歪んだ表情を見て、ずきんと胸が痛む。後悔に似た感情が、体の中を一気に突き上げた。


「ち、ちがうのっ、ノア。そんな意味で言ったんじゃ――」

「もう、タマちゃんのそばにはいられない」

「やめてっ」


彼の腕にすがりつく。やめて。やめて。そばにいられないなんて、どうして。


「ねえノア、人間だとか犬だとか、ほんとはそんなことが言いたいんじゃないのっ。わたしはただ、ノアがそばにいてくれたらっ……。ねえ、一緒にいようよ、わたしと一緒にいてよ……!」


恥も外聞もなかった。すがることで引き留められるなら、いくらでもすがってやる。

そうでもしなくちゃ、本当に彼がいなくなってしまう。それはほとんど確信だった。